★Akanthomyces tuberculatus (ガヤドリナガミノツブタケ)

■ 2024年06月22日 撮影

しんや氏のフィールドにて撮影。昨年からずっと定点観察していた子実体です。 主にノコメセダカヨトウなどのガの成虫を宿主とする気生型の冬虫夏草の代表種「蛾寄生長実粒茸」です。 沢筋の幹や枝に掴まったまま絶命した鱗翅目の成虫から発生するとても美しい種です。 本種は神出鬼没で発生環境の特定が難しく、ぶっちゃけ出会いは「偶然」が占める割合が大きいです。 だからこそ出会えると嬉しいのですけどね。ちなみに種小名の「tuberculatus」は「疣状突起の」の意味です。

以前は「Cordyceps tuberculata f. moeleri」でしたが、学名が変更され、 Akanthomyces属になっています。確かにアナモルフがCordyceps属のソレじゃないですもんね。 また本種には良く似た種が複数存在するのですが、その中の幾つかは個体差の可能性があります。 個人的には明らかに別種だと思えるのはガヤドリミジンツブタケとガヤドリトルビエラツブタケあたり?


■ 2024年06月22日 撮影

この子実体、ど根性ガヤドリで、前脚2本だけで細い枯れ草に固定されているのです。 場所も風通しの良い滝壺の出口付近で、脱落しないか半年以上心配していました。 しかしそんな心配はどこ吹く風。理想的な美しさに仕上がっていました!


■ 2023年10月01日 撮影

初発見は前年の秋。滝壺のすぐ下流、沢に張り出した枯れ草にピトッと付いていました。 背景の雰囲気が非常にエモかったのでメッチャ撮っちゃいました。


■ 2023年10月01日 撮影

本種は越年性なので本年の成長はここまででしょう。 この状態で越冬し、来年の梅雨頃に成熟すると予想されます。 形状が美しいので子嚢殻形成まで行って欲しいですが、 付いているのも草本ですし、開けた場所なので降雪に負けて脱落することが多いんですよね。


■ 2024年06月01日 撮影

半年以上振りに訪れていみると、何と奇跡的に脱落せずに残っていました。 個人的には絶対に落ちて沢に流されていると思っていたので嬉しかったです。 しかしまだ未熟だったためしんや氏に採取の許可をいただき、採取日のスケジュールを合わせました。


■ 2024年06月22日 撮影

そして迎えた約束の日・・・これです!これこそガヤドリの理想的な子実体です! 昨年伸びたストローマの表面に鮮黄色の子嚢殻をビッシリ付けています。 本種の子嚢殻は鮮やかな上に透明度が高いため、光に透かすとまるで宝石のようです。 個人的には冬虫夏草の中でも最も美しい子嚢殻を持つ種ではないかとさえ思いますね。


■ 2024年06月22日 撮影

本種には今まで何度も出会っているのですが、今回採取させていただいたのには理由があります。 それは胞子観察できていなかったからです。理由は簡単で、採取時期を見誤ったんです。 地元で美しい子実体を見付けていたのですが、成長を見たくて採取のタイミングを逃したんですよね。 だって綺麗なんですもん。もう少し置いておこうかな?まだかな?って思ってる内に・・・。


■ 2024年06月22日 撮影

帰宅後に胞子等顕微鏡観察がスムーズに終わったので、採取当日に黒バック撮影しました。 気生型冬虫夏草はクリーニングの必要がほとんど無いのがありがたいですね。 もうこの段階でお分かりでしょうけど、マジで美しいんですよ。 ガの死骸から微細なシトリンの結晶が飛び出しているような、まるで宝石です。


■ 2024年06月22日 撮影

背後に光源を置くとその美しさが際立ちます。 本種は白いストローマを伸ばし、その表面に子嚢殻を形成するのですが、 宿主が大型であること、子嚢殻が裸生であること、 子嚢殻が明色であることが非常に大きいのです。 明色で裸生の子嚢殻は光の透過度が高く、宿主が大きいため子嚢殻の数が多いです。 そのためこのように光り輝いて見えるのです。


■ 2024年06月22日 撮影

あまりにも美しいので別角度からもう1枚。マジでそれだけ。


■ 2024年06月22日 撮影

ここからは念願の顕微鏡観察です。以前地元で見付かったものは結局採取のタイミングを逃し、 結果ミクロの情報を一切取れなかったんです。今回はガッツリ行きますよ! まずは低倍率で子座と子嚢殻を観察です。子嚢殻が裸生する様子が良く分かります。 子嚢殻が明るい色合いなので光の透過度が高くて観察しやすいです。


■ 2024年06月22日 撮影

子嚢殻のみを切り出してみました。サイズは500μmでプラマイ50μmくらいでしょうか? ほぼ図鑑の記載通りだと思います。


■ 2024年06月22日 撮影

次に子嚢殻を潰して内部の子嚢を観察してみました。 長さは450〜500μmで、子嚢殻にちょうど収まるくらいの長さですね。 この細長い細胞の中に子嚢胞子が入っています。


■ 2024年06月22日 撮影

子嚢の先端を油浸対物レンズで高倍率撮影してみました。 先端には肥厚部と言う厚みがあり、ここに穴が開いています。 ここから内部に見られる子嚢胞子が噴出する感じですね。 この状態でも内部の二次胞子が視認できます。


■ 2024年06月22日 撮影

まずは低倍率で撮影した子嚢胞子ですが、どう見ても陰m・・・失礼。 この状態だとマジで一部体毛にしか見えないのでもう少し倍率を上げましょう。


■ 2024年06月22日 撮影

子嚢胞子は糸状でうねっているので分かりにくいですが、目測で310〜380μmくらいでしょうか? 子嚢殻と子嚢の長さ的にこれくらいかな?とは思えるサイズですね。 ちなみに隔壁が確認できるのですが、視認しにくい上に縮小するとほぼ見えませんね。


■ 2024年06月22日 撮影

てことでメルツァー試薬で染色して光源を調整することで隔壁を見やすくして見ました。 本種は二次胞子には分裂するものの新鮮な状態ではあまり分裂しようとしません。 ですが試薬を用いることで隔壁がハッキリ見えるようになります。 数えてみると分裂数はバラバラ。少ないものだと50個前後ですが、 62個までは確認できたので、最大64個までは分裂するポテンシャルを持ち、 分裂数が安定しないため未分裂により細胞数が減ることがあるって感じのようです。


■ 2024年06月22日 撮影

二次胞子には分裂しづらいですが、時間経過でパラパラと分裂し始めます。 キレイな円筒形で長さは4〜8.5μmとかなり違いがあります。両端の細胞は弾丸型。


■ 2024年06月22日 撮影

オマケで裏側もパシャリ。裏側にもしっかりと子実体を形成しています。 ここで面白いことに気付きました。本種は太い幹に張り付くと幹に菌糸を伸ばしてガッチリ固定されます。 しかしこの子実体は何と前脚2本だけで半年以上細い草本に付いていたことになります。 でもちょっと考えてみてください。虫の死骸なんて短時間でボロボロになっちゃいますよね? なのになぜ脚だけでプラプラしているのに落下しなかった・・・? じっくり観察してビックリ!実は宿主は脚の内部が菌糸に置換されており、 脚の表面も菌糸に覆われています。つまり菌糸の力だけで体勢を維持していたのです。 少しでも高い場所から効率良く胞子を飛ばす、そのための進化に驚かされました。

残念ながら薬用成分も無く食用価値無しです。まぁモロにガですしね。 本種のキノコ部分は実質表面の菌糸と細いストローマだけですから。 しかしここまで熱く語るくらいには美しい冬虫夏草だと思っていますので、 出会ったら思いっ切り愛を込めて愛でてあげて下さい。俺の推しの娘(冬虫夏草)ですので。

■ 2016年06月25日 撮影

実は地元で見ていました旧TOP写真の子実体です。と言うか地元に居てビックリしましたよ。 オフ会を開催した際に以前から見付けていた子実体をご案内しようと思ったら、 同行のいんたー氏が新規発見!ガガンボ氏どろんこ氏も大興奮でしたね。 しかも非常に美しい子実体でした。ただ色々と失敗しちゃったのが心残りで・・・。


■ 2016年02月27日 撮影

発見当初はまだ冬で子嚢殻は全く出来ていない状態だったのです。 時間をかけて定点観察を行い、成長を観察し、やっと掲載できました。


■ 2016年02月27日 撮影

宿主を拡大。翅の模様からノコメセダカヨトウで間違い無さそうです。 幹に掴まったまま息絶え、菌糸が幹に広がって完全に固定されていました。 不規則にストローマが伸びるこの姿!う〜んカッコイイ!


■ 2016年06月04日 撮影

変化があったのは6月。表面がつぶつぶして来ています。成熟間近!


■ 2016年07月02日 撮影

最終的には一番上の写真撮影後に翅が脱落してこのような姿になりました。 一枚面が変な色に写ってしまい撮り直したかったのですが・・・残念です。 しかし子嚢殻はこの段階が最も多く、この後しばらくして採取しました。 本種は越冬する性質から、大半は降雪や降雨で翅が落ちてしまうんですよね・・・。


■ 2016年07月08日 撮影

採取後に室内で黒背景で撮影してみました。な、何と言う美しさだ! 子嚢殻が鮮やかな黄色で透明感があるので、裸生の魅力が溢れてます。 キラキラと輝く子嚢殻が、まるでガの死骸から花が咲いたかのようです。


■ 2016年07月08日 撮影

マクロレンズで超拡大してみました。子嚢殻は鮮黄色で透明感があり、まるで宝石のようです。 ですが実はこの時点で過熟であり、子嚢胞子の観察には失敗してしまいました。 敗因は私が採取をもったいぶってしまったこと。だって美しいんですもん! 迷っている内に無事だったはずの翅は砕け、子嚢胞子も吹き終わってしまったんです。 2024年にリベンジできて本当に嬉しかったです。肩の荷が降りましたよ。

■ 2016年02月17日 撮影

実は初発見は真冬。崖のオーバーハングした部分に付いていました。 見付けた時はもう興奮のあまり一人冬の森の中で絶叫してましたね。 本種のような気生型種は葉の少ない冬場の方が見付けやすいです。


■ 2016年05月28日 撮影

実は初発見後一度雨で脱落し、拾い上げて崖中ほどに乗せておきました。 しかし運悪くまたも脱落、しかも根に引っかかって宙吊り状態に・・・。 結果重さを感じないほどに乾燥してしまい、生存は絶望的になりました。


■ 2016年05月28日 撮影

しかし暑さを感じ始めた5月末、諦め半分で訪れた時に異変に気付きました。


■ 2016年05月28日 撮影

子嚢殻が出来てる!そんなバカな!あの乾燥を耐えて再成長できるのか! 例えるなら干し椎茸を水で戻したら成長し始めたってくらいの衝撃です。 気生型の冬虫夏草が乾燥に強いからと言ってカリカリでも死滅しないなんて!


■ 2016年05月28日 撮影

興味深いのはストローマ表面に白い菌糸が広がり子嚢殻が出来ると言うこと。 この感じはツブノセミタケなどの子嚢殻形成パターンに良く似ています。 針タケ型で子嚢殻が裸生する種はストローマから直接子嚢殻が形成されます。 この感じ・・・当時から「Cordycepsっぽくないなぁ」とか思ってました。 てかここにそう書いてました。当たってましたね。

■ 2017年07月29日 撮影

どろんこ氏とgajin氏参加の冬虫夏草オフにてgajin氏の案内で発見。 以前ヤンマタケが発生したフィールドを散策するも、発見はできませんでした。 今年は会えてなかったので嬉しい!標本は観察のためどろんこ氏へ・・・。


■ 2017年07月29日 撮影

拡大してみました。垂れ下がった細い枝にしがみ付くように死んでいます。 宿主はやはりノコメセダカヨトウのようですね。このガが好きなのかな? 面白いことに、このフィールドは不思議と開けた場所で湿度もチョイ高い程度。


■ 2017年07月29日 撮影

拡大してみました。短いストローマにもしっかりと子嚢殻が出来ています。

■ 2023年05月03日 撮影

しんや氏のフィールドを訪れた際に案内して頂いた子実体なのですが、 今回コレを見たことで色々と気付きがありました。


■ 2023年05月03日 撮影

まず第一印象として感じたのが「・・・ジュズミノガヤドリタケ?」でした。 針状になるハズのストローマが部分的にボコボコと膨らんでまるでジュズミノのようです。 聞けば2年目に突入しているそうで、前年の写真で見るとちゃんと普通のガヤドリでした。


■ 2023年05月03日 撮影

マクロ撮影して気付いたのは、昨年の結実部周辺に大きな菌糸塊が形成されていることです。 そして良く見ると少し新しい鮮黄色の子嚢殻が形成されかかっているのも確認できました。 そして周囲には褐色の古い子嚢殻が・・・ここでふとosoは感じました。 ひょっとすると古い子嚢殻が残ったものがアメイロスズメガタケで、 2年目に突入し、球状の菌糸塊を形成したものがジュズミノガヤドリタケなのではないか、と。 微細な子嚢殻を形成するガヤドリミジンツブタケは重複寄生だと思うので、 実は複数存在するガヤドリ系の冬虫夏草は同種なんじゃないか、と思ったりして。


■ 2023年06月10日 撮影

約1ヶ月後、気温も湿度も上がり始めた6月。 再度しんや氏のフィールドを訪れたので顔を見に行きました。 するとGWの頃は全く見られなかった子嚢殻が!完熟に期待して見守ることにしました。


■ 2023年07月01日 撮影

さらに約1ヶ月後。この日は青fungi氏も加わって3人でのしんや氏フィールド探索オフ。 生憎の天気でしたが色んな冬虫夏草が見られました。 その道中に居るガヤドリを見てみると、完熟と言って良いであろう成熟度合いになっていました。 今までとは明らかに異なる鮮やかな黄色の子嚢殻が宝石のような輝きを放っていました。


■ 2023年07月01日 撮影

子嚢殻をマクロ撮影。う〜ん美しい!透明感のある裸生子嚢殻の美しさは筆舌に尽くしがたいです。 しかし2年目でもここまで美しい状態に仕上がるのですね。冬虫夏草の力強さを感じました。

■ 2023年08月06日 撮影

しんや氏のフィールドにて感染初期の宿主に出会いました。 まだ菌糸が胴体周辺にしか広がっておらず、翅の模様がクッキリ残っています。 その特徴的な模様からもバリバリのノコメセダカヨトウですね。 美しい産状ですが、掴まっているのがシダなので多分雨や雪で脱落するでしょうね。


■ 2023年08月06日 撮影

不思議と有性世代を形成するのはノコメセダカヨトウが多いんですよね。 オオミズアオのような大型のガにも出るみたいなので、宿主特異性はそこまででもないかもですが。

■ 2023年10月01日 撮影

夏の暑さも穏やかになり、快適な気候になって来た10月一発目のフィールド。 しんや氏のフィールドへお邪魔したこの日はガヤドリフィーバーしてました。


■ 2023年10月01日 撮影

印象に残ったのはこの感染最初期と思われる宿主でした。 何と菌糸がほとんど広がっていないため複眼が見えているんですよ。 当然脚にも胴体にも菌糸は広がっておらず、枝にも脚の力だけで固定されているようです。 とても優秀な発生状態ですが、場所的に多分雪で落ちますね・・・。 ここからは追伸ですが、2024年6月、落ちずに居ました菌糸って凄い。

■ 2024年06月22日 撮影

TOP写真を撮影した同日、近くで気になるガヤドリが見付かりました。 宿主は同じノコメセダカヨトウなのですが、子実体の雰囲気が随分と違う・・・。 現地ではメンバー全員あまり気にせずその場を後にしたのですが、 後に写真を観察して非常に珍しいとされるガヤドリトルビエラツブタケの可能性が浮上。


■ 2024年06月22日 撮影

発端はこの1枚。まずストローマが伸びていないんですよね。 そして子嚢殻が埋生気味。これがガヤドリトルビエラツブタケの特徴なのです。 少しストローマが伸びている部分はありますが、全体的に見慣れた姿とは異なります。 そのためしんや氏に再度採取していただき、私がサンプルを受け取って観察することになりました。 結果は・・・。


■ 2024年06月25日 撮影

ガヤドリナガミノツブタケでした。いやここに掲載してる時点でネタバレなんですけどね。 ガヤドリトルビエラツブタケであれば胞子が短く、二次胞子が遥かに少なくなります。


■ 2024年06月25日 撮影

せっかく再訪して採取していただいたのに早とちりでした・・・申し訳ございません。 サンプルは勿体無いので黒バック撮影して凍結乾燥に回すことにしましたが、 観察中にどうしてこのような形状になったかは仮説が立てられました。


■ 2024年06月25日 撮影

まず注目すべきは裏側です。良く見ると裏側にはストローマがあるんです。 本種は本来背中側に無数のストローマを形成するハズです。 その方が遮蔽物がある幹側より胞子を飛ばしやすいですからね。


■ 2024年06月25日 撮影

しかし背中側のストローマはほとんど伸びず、子座から直接子嚢殻を形成しています。 実はこのガヤドリが付いていた枝は頭上から落下して地面付近で止まっていたのです。 つまり高湿度の沢筋ではなく乾燥する頭上で絶命して固定されていた可能性があります。 湿度が低いため風や日光に曝される背中側には子実体が発生せず、 陰になる腹側に子実体が発達した状態で越冬したのではないでしょうか? その後風雨で枝ごと落下して生育に適した高湿度の沢筋に環境が移動しましたが、 ここからストローマは伸びないので、その状態から子嚢殻形成にフェーズ移行した、 そう考えると辻褄が合います。子嚢殻が埋生気味なのも本来より密に子嚢殻が形成されたためでしょう。


■ 2024年06月25日 撮影

と言うことで形状の謎はあるていど判明しました。菌は見た目によらぬものと言うことでした。 まだまだ精進が足りないですね、反省です。最後に別角度で撮影。やっぱり美しいですね。 少しでも子嚢殻を作る面積を広げようと幹にまで進出する貪欲さ、好きです。

■ 2024年07月06日 撮影

油蝉氏主催の大規模冬虫夏草オフにて見付かった小型のガに発生したものです。 最初はその形状からガヤドリトルビエラツブタケが違われましたが違ったようです。 この場所は非常に高湿度のため、宿主が小型でも条件が合った可能性がありますね。

■Akanthomyces tuberculatus (スズメガタケ)

■ 2018年12月22日 撮影

実は以前地元でも発見していましたが、状態の良い子実体に出会えたので掲載決定です。 コチラはガガンボ氏が発見したもの。 小型のガの成虫に感染する気生型の冬虫夏草「雀蛾茸」です。 ガヤドリナガミノツブタケの未熟個体やアナモルフとされていますが、どうも後者のようですね。 子実体表面に分精子形成細胞が確認できたので、同一ページ内に載せることに。

あくまでもこの和名は通称であって、正式なものではないようです。 テレオモルフと分けるサイトの形式の関係上採用しました。 ガヤドリが小型のガに感染した場合、子嚢殻を形成せずに分生子での繁殖を行うようです。


■ 2018年12月22日 撮影

拡大してみました。宿主は木の幹に貼り付いたヤガやハマキガのような小型のガの成虫。 そこから薄黄色の細長い棒状の子実体を無数に生じています。 テレオモルフのガヤドリナガミノツブタケはこの表面に子嚢殻を作りますが、ガヤドリに比べると明らかに細いですね。 しかし以前観察したものはそのまま腐ちてしまいました。 未熟のまま成長できなかったのだと思っていましたが、ちゃんと活動してたんですね。

テレオモルフのガヤドリ自体が食用価値無しなのに、これだけ小さいなら当然食用価値無しでしょう。 大型のガヤドリと比べると中身もスカスカのことが多いようです。

■ 2018年12月22日 撮影

コチラは私が最初に発見した子実体。 環境的に気生型の冬虫夏草が出そうだなと木の幹を重点的に探していたら案の定見付かりました。 小型ですが暗色の幹に明色の子実体が付いているので比較的気付きやすいです。


■ 2018年12月23日 撮影

伸びている子実体を1本切り取って顕微鏡を用いて観察してみると・・・ビンゴ! 表面に分生子がビッシリ付いているのが分かりました。 確かにマクロレンズで撮影した段階でも表面が少しコナコナしてたんですよね。


■ 2018年12月23日 撮影

少し倍率を上げてみるとアナモルフであることが良く分かります。 と言うことはこの伸びている部分は分生子柄束と呼んだほうが良いのでしょうか。 もしかするとテレオモルフのガヤドリナガミノツブタケも冬場はアナモルフになってるのかな?


■ 2018年12月23日 撮影

低倍率では良く分からないので油浸対物レンズの出番です。 表面には分生子形成細胞がビッシリ並んでおり、その先端から分生子が連鎖するように形成されています。 連載しているのでフィアライドと呼んで良いかな?


■ 2018年12月23日 撮影

分かりやすいよう分生子形成細胞周辺を切り出してみました。 フィアライドは卵型で先端が尖っており、そこから数珠つなぎに分生子が形成されています。 生クリームのチューブで次々とひり出すように次々と分生子が作られていく感じなのでこんな感じで連鎖します。 このフィアライドの形状は確かにAkanthomyces属のものですね。


■ 2018年12月23日 撮影

分生子は不規則な楕円形で長さは4〜5μm。放出されても連鎖したままのものも多く見られます。 子嚢殻を作れない環境ではやっぱクローンで増えてるんですね。
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