★Ionomidotis frondosa (クロハナビラタケ)

■ 2015年01月10日 撮影

人の手が加わって環境が変わってしまった地元の里山。 伐採によって積み上げられたブナ科広葉樹の枝に大発生していてビックリしました。 ずっと出会いたかった広葉樹に生えるキクラゲに似た「黒花弁茸」です。 発生時期に特徴があり、他のキノコが消え失せた晩秋〜冬あたりにキレイな子実体を良く見ます。 実はかなりの変わり者で、じっくり観察すると興味深い種ですね。 ついでに本種は日本特産であり、海外では見られない貴重な種です。 種小名はマイタケと同じで、理由は意味を調べると納得できるかと。

まず最初に言わねばならないのはキクラゲ型ではなく子嚢菌類と言うこと。 外見は花弁状で紛らわしいですが、顕微鏡で見ると子嚢胞子が確認できます。 またKOH水溶液で紫色の色素が溶出(Ionomidotic反応)するのが特徴。


■ 2015年01月10日 撮影

拡大してみました。子実体は全体が黒紫色。マットブラック仕様です。 種小名がマイタケと同じなのは複数に枝分かれする傘を反映しています。 乾燥時はツヤが有りませんが、水分を吸うと光沢が現れて来ます。 この状態だとキクラゲの仲間に見えますが、透明感が皆無なのです。 こうして見るとちゃんと椀形の部分が確認でき、子嚢菌類だと思えます。

実は本種は小型の子嚢菌類としては非常に珍しい毒キノコなのです。 毒性も比較的高く、誤食すると強烈な胃腸系の中毒症状を引き起こします。 キクラゲに形の似た毒キノコは少なく、先入観で採らないことが重要です。 特にクロハナビラニカワタケの乾燥時と酷似するため入念に観察するように。

■ 2015年01月10日 撮影

成長し始めたばかりの幼菌です。この段階だと黒いチャワンタケですね。 それにしても取り巻きのフジツボみたいな子嚢菌類が地味にキモいです。

■ 2015年01月10日 撮影

このような状態だと確かにキクラゲの仲間に見えますね。透明感無いですが。 椀形の子嚢菌類の名残はありますが、不規則に子実層面が出来るようです。

■ 2015年01月10日 撮影

かなり成長した段階。ロクショウグサレキンモドキに似た成長の仕方ですね。 本種の特徴として成長方向に表面に顕著なしわがある点が挙げられます。 このように個々が分かれていれば誤食することも無いんでしょうけどね・・・。

■ 2015年01月31日 撮影

実況撮影時に撮影した一枚。雨の後で明るかったので写りがかなり良いです。 表面のシワも水分を吸ってると綺麗に浮き出てます。コンディションは最高!

■ 2015年06月27日 撮影

初発見時から約半年が経ちました。どんだけ長持ちなんだよコイツ・・・。 ほんどの子嚢菌が成熟後数日で朽ち果てる中、まだ成長を続けています。 まだ腐る様子は無く、むしろ本種らしい特徴がどんどん出てきて楽しいです。


■ 2015年06月27日 撮影

以前は確認しづらかった成長方向のしわがハッキリ見ることができます。 また子実体自体に厚みが感じられるようになり、貫禄が出て来た気がします。

■ 2017年03月12日 撮影

最近は色んな場所で見るようになりました。発生地は複数あると安心安心。 かなり乾燥しているようでクロハナビラニカワタケにかなり似ていますね。 ただ光を全然透過しません。クロハナニカワは赤っぽく透けますからね。

■ 2018年05月13日 撮影

以前大発生していた場所を訪れてみましたが・・・かなり数が減っていました。 残っていたのは小さな子実体の残骸だけ。でも今回はこれで十分でしょう。 子実層を拡大するとそれ自体が暗い黄土色を帯びていました。流石は黒いだけのことはある。


■ 2018年05月13日 撮影

左が通常状態の子嚢、右がメルツァー試薬で染色した状態の子嚢です。反応ナシ。非アミロイドです。 子嚢が極めて小さいので自信はありませんが、文献的には合ってるかな。


■ 2018年05月13日 撮影

少し古かったですが胞子も観察できました。ソーセージのような形状です。 この頃は油浸対物レンズを解禁していなかったので微妙な写りですね。要リベンジか?


■ 2018年05月13日 撮影

今回ここを訪れた最大の理由は水酸化カリウム3%水溶液を入手したこと。 正確には持ってたんだけどずっと忘れていて、それを思い出したことです。 そう、あの反応を見たい!スライドグラス上に破片を置き、スポイトでKOH水溶液を垂らすと・・・。


■ 2018年05月13日 撮影

来ました!赤紫色の色素が溶出するIonomidotic反応です。生でコレを見れたのは嬉しい! 図鑑などでは紫色と書かれていますが、どちらかと言うと赤に近いと言う印象です。 ただこれを紙などに吸わせると確かに紫色っぽいかな?と言う色合いになります。 しかし子実層を観察してもこんな赤紫色要素はどこにも無かったんですけどね。 どっちかと言うと黄土色っぽかったハズなんですけど。不思議です。


■ 2018年05月13日 撮影

Ionomidotic反応を動画で撮影してみました。KOH水溶液を滴下すると勢い良く色素が吹き出すのが分かります。 もっとじわ〜っと染み出してくるのかと思いきや意外と肉眼的な反応でビックリしました。 検索しても全然出てこないので、それなら自分で録っちゃえって感じですわ。

■ 2022年07月23日 撮影

冬虫夏草オフにて偶然遭遇。狙ってはいませんでしたが帰り際に通路脇に積まれた材に出ていました。 と言うか本種は森を整理するために切られて廃棄された材に良く出ている気がします。 ブナ科広葉樹がそのターゲットになることと、倒されることで発生に適した環境になることが理由かな?
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