★Ophiocordyceps formicarum (マルミアリタケ)

■ 2016年04月16日 撮影

近所の里山の林道を歩いている時にマツの倒木に不自然な黄色を発見。 素晴らしい発生坪を発見する事ができたので写真も大幅差し替えです。 ミカドオオアリも宿主ですが、特にムネアカオオアリから良く発生する冬虫夏草「丸実蟻茸」です。 同じハチ目のハチから発生するハチタケの結実部を丸くしたような外見ですね。 比較的普通に見ることができ、発見も容易。西日本では発生が早いです。

地中や材の穴に居る宿主から発生するみたいです。誘導ではなさそうかな? 営巣時に感染し内部で死亡すると言う宿主の生態に頼っている気がします。 結実部先端が尖るアリタケが存在しますが。正直別種か良く分かりません。


■ 2016年04月08日 撮影

実は一週間前に発見していました。最初はコガネムシタンポタケかと・・・。


■ 2016年04月08日 撮影

この時期にマツの朽木と言うとヒメカバイロタケも可能性がありますからね。 マクロレンズで覗いてみるとちゃんと子嚢殻が。冬虫夏草に間違い無い! 先端部の形状と材が広葉樹ではない点から掘らずともすぐ分かりましたね。 この段階では左側の4つは未成熟だったので、一週間待って撮影しました。


■ 2016年04月16日 撮影

ストローマを切らないように慎重に材を剥がします。何とか上手く行きました。 胸部や腹部からストローマが伸び、先端に黄色い結実部を形成しています。 結実部は直径3mm程度と極めて小型ですね。これでも大きい方なんですが。


■ 2016年04月21日 撮影

更に数日後、胞子飛散を確認した後、標本用に採取、クリーニングしました。 宿主はムネアカオオアリの女王ですね。朽木に営巣する性質があります。 そのため針葉樹の倒木が多い環境を探すと本種も良く見付かりますね。 普通は頭部後ろから1〜2本出るんですが、栄養が豊富なのか5本出てます。 また菌糸はほとんど見えませんが腹部の体節から菌糸が少しハミ出してます。


■ 2016年04月21日 撮影

白バック初めてやってみたんですが、結構良いですね。特に冬虫夏草には。 結実部をマクロレンズで超拡大!橙色の子嚢殻の先端部が見えます。


■ 2016年04月21日 撮影

子嚢殻の下側に脈のようなものが浮き出ているのは埋もれた子嚢殻です。 本種の子嚢殻は斜め上向きに形成される斜埋生型と呼ばれるタイプ。
この先端部から子嚢胞子を出し、新たなターゲットを探すと言うワケ。 一部白いホコリのような物が飛び出していますが、それが子嚢胞子です。

冬虫夏草の仲間と言う事ですが本種に関しては薬用価値無しみたいです。
まぁメチャクチャ小さいですし、発見難易度も高いので観賞用ですね。

■ 2015年04月12日 撮影

実況撮影時に発見した初めてのマルミ。ミカドオオアリが宿主のようです。 本来は材から出ますが、このように土中や落ちているだけのこともあります。 女王アリは大きいので最初はハチだと思ってました。無知は恐ろしい・・・。


■ 2015年04月12日 撮影

掘り出してみました。アリは菌糸がハミ出す事無く原型を留めています。 ストローマは顎の付け根から出て一度壁にぶつかり曲がってしまってます。


■ 2015年04月12日 撮影

野外で撮影したのでピントが少し甘かったですね。成熟度合いは中々です。 斜埋生型のため子嚢殻が斜め上に伸びており、下方に筋が見えてます。 非常に小さな冬虫夏草ですが、この結実部の派手さは超目立ちますね。

■ 2015年05月23日 撮影

くさびらじかる氏と猫幸氏との梅雨入り前のキノコ散策オフにて偶然発見しました。 ちなみにこれがお二人の馴れ初めになったと言う奇跡。 圧倒的なサナギタケの量に半ば呆れかけていた時に苔生した朽木に異物発見! 森の中で叫んでしまいました。苔の縮尺から如何に小さいか分かりますか?


■ 2015年05月23日 撮影

朽ちた樹皮を引っぺがしてみると・・・見える!下にアリの腹部が見える! 一匹の宿主から無数のストローマを伸ばし、樹皮を突き破っていました。 結実部も丸く、斜埋生型の子嚢殻のせいで下向きに脈が浮き出ています。


■ 2015年05月23日 撮影

クリーニングすると宿主はやはりムネアカオオアリの女王アリでした。 ストローマはほとんどが胸の辺りから発生。結実部が無い物も多いです。 恐らく樹皮を突き破れていればもっと沢山の結実部が見られたことでしょう。


■ 2015年05月23日 撮影

結実部拡大。子嚢殻は斜埋生型で、孔口部が少し突出してオレンジ色です。 キッチンペーパーの上に乗せての撮影は流石にちょっとダサかったかな?

■ 2016年04月09日 撮影

まだやや未熟のため子嚢殻先端があまり突出していない子実体を発見です。 かなり材の浅い部分に宿主が居たため掘るのはかなり簡単なほうでしたね。

■ 2016年04月29日 撮影

結実部がかなり小さい子実体を発見。これはワーカーが宿主かな?


■ 2016年04月29日 撮影

拡大してみると糸状の子嚢胞子を噴出していました。成熟してますね。 本種の子嚢胞子は二次胞子に分裂するのでやがて千切れて飛散します。 しかしワーカーに出る子実体は本当に小さくて見付けるのが大変です。

■ 2016年04月29日 撮影

イモムシが首振ってますが私は元気です。じゃなくてマルミアリタケです。 珍しく材のかなり奥に潜んでいたので材中を進む子実体も長細いですね。 結実部には二次胞子に分裂した粉状の胞子がビッシリ付着していました。

■ 2017年05月27日 撮影

今年は地元でまだ見付けてなかったんですが、遠征で偶然出会いました。 目的は地下生菌生の冬虫夏草でしたが、道中沢筋の朽木に出ていました。


■ 2017年05月27日 撮影

地元では4月中旬にピークを迎えるので、まだ居るとは思いませんでした。 でも流石に成熟していたのか、子嚢胞子を噴出した痕跡がありました。


■ 2017年05月27日 撮影

問題はここからでした。普通なら簡単に掘れる、と断面作成を開始。 ・・・したは良かったんですが材がアホみたいに硬いんですよ。 枝部分の空洞に営巣していたらしく、ニッパーでバキバキ砕く羽目に。 引っこ抜けば簡単だったんですが、やっぱ断面は見ておきたいですし。


■ 2017年05月27日 撮影

中はやはりムネアカオオアリの女王。複数本は大抵が女王生ですね。 やはりストローマの本数は宿主の栄養量にある程度比例している模様。

■ 2017年08月12日 撮影

まさか亜高山帯針葉樹林この時期に出会うとは思わずビックリしました。 確かに地元では春がシーズンですが、他所では意外と普通に夏発生みたい。 宿主はムネアカオオアリの女王でしたが、不思議と生体に出会いません。

■ 2018年06月16日 撮影

ignatius氏のフィールドにて発見。女王アリではなくワーカーから出ているのは久々に見ました。 この場所ではほとんどが地上生で働きアリから出るのだそうです。

■ 2020年06月13日 撮影

実は地元フィールドでは4年振りの出会いとなりました。 不思議と2016年の発生を最後に見付けることができませんでした。 どこかに居るだろうなと思ってはいましたが、実際に見付けられると安心感がハンパ無いです。 この日は他にも子実体が見付かりましたし、そこら辺に居るには居るのでしょう。


■ 2020年06月13日 撮影

材の中から出ているところを見るに、恐らく女王アリがホストでしょう。 ・・・のワリには子実体は1本だけ。となるとあまり栄養状態が良くないのかな?


■ 2020年06月13日 撮影

掘り出してみると結構奥のほうにホストが居ました。やはり女王ですね。 今回の最大の目的は顕微鏡観察です。 過去、本種を発見した段階では現在のgajin氏に頂いた顕微鏡はまだ無かった頃。 性能の良い顕微鏡は持っておらず、そのため胞子観察ができていませんでした。 今回は機材的にも技術的にも本種の胞子を観察するに足る状態でしょう。


■ 2020年06月13日 撮影

と言うことでサンプル採取して顕微鏡観察前に黒バック撮影。 ちなみにトイレに行ってる間に胞子を噴出しまくって焦りました。


■ 2020年06月13日 撮影

結実部を見上げてみました。高性能マクロはやっぱり冬虫夏草の撮影には必要ですね。 結実部下面にしわが寄って見えるのは子嚢殻が浮き出しているためです。 本種の子嚢殻は斜埋生型で、結実部の付け根から上方向に伸びています。 そのため子嚢殻が下面に浮き出して見えるのです。 意識して見ると意外と子嚢殻に奥行きがあることが分かりますね。


■ 2020年06月13日 撮影

子嚢胞子を観察・・・してみたんですが、これじゃダメですね。


■ 2020年06月13日 撮影

てことでちょっとどころかかなり長いですが縦に掲載してみました。 子嚢胞子は糸状で長さは700μm前後とかなり長いです。 正直もう少し倍率上げて掲載しても良いかと思えるほどですよ。 そりゃ子嚢殻があれだけ長いってことは中の子嚢も子嚢胞子も長くなりますわな。 また二次胞子の数を数えてみると図鑑通りの64個でした。 やはり図鑑に載っている特徴が確認できると安心できますね。


■ 2020年06月13日 撮影

大量の胞子を噴出して焦りました。 あまり一気に出ると未分裂の子嚢胞子を見付けるのが大変になるんですよね。


■ 2020年06月13日 撮影

二次胞子は紡錘形11〜13μmと図鑑の記載より一回り短いかな? 隔壁のような境界ではなく、二次胞子1つ1つがしっかりと独立したような形状です。 また所々に弓形に反った二次胞子が散見されます。

■ 2023年05月03日 撮影

2020年の胞子観察成功以降、フィールドを訪れることが無くなっていたマルミアリタケ。 今回しんや氏との2人だけのプチオフでしんや氏より見たい!とのリクエストを頂きました。 あれ以降ずっと探していないので不安を抱えながらいつものフィールドへ。 すると探し始める前にしんや氏がアッサリ発見して唖然としちゃいました。


■ 2023年05月03日 撮影

拡大してみると良い感じに成熟しています。胞子観察頑張って下さい! ・・・としんや氏を送り出した私ですが、本種は非常に二次胞子に分裂しやすい種。 しんや氏も水封しての顕微鏡観察にチャレンジしましたが、やはりバラけてしまったそうです。


■ 2023年05月03日 撮影

怖い怖いと叫びながらもしんや氏が無事に掘り取りに成功したものを撮影させて頂きました。 宿主はやはりムネアカオオアリの女王。迫力が違いますね。 リクエスト消化できて本当に良かったです。
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