★Ophiocordyceps purpureostromata (ムラサキクビオレタケ)

■ 2019年08月17日 撮影

どろんこ氏に随分前からお願いしていたベニイロクチキムシタケ観察オフ。 もちろん主役も出会えたのですが、そのインパクトを食ってしまった大発生! 和名「紫首折茸」。コメツキムシ類の幼虫を宿主とする冬虫夏草の一種です。 低地で見られることもありますが、やや冷涼な環境を好む傾向があります。 そのためブナ林帯で見かけることが多いですね。

名前が似たサビイロクビオレタケは主にハエ目の幼虫を宿主とします。 甲虫の幼虫生だとアシグロクビオレタケが紛らわしいです。 ただアシグロとは子実体の形状や色、胞子観察によって区別することが可能です。


■ 2019年08月17日 撮影

腐朽が進んだブナ材に多数の発生が確認できました。 特にこのポイントは子実体が2つ並んで発生していて絶好の撮影スポットでした。 子実体は和名のワリには淡褐色ですが、幼菌や成長点付近は淡紫色です。 ストローマの折れ曲がった外側に結実部が出来る典型的な首折れ型と呼ばれる子実体の持ち主です。 子嚢殻の密度的に下の子実体のほうが成熟しているようです。


■ 2019年08月17日 撮影

どろんこさんが作成した断面です。流石のクオリティ! ボヤけて見えますが奥にもかなり大きな子実体があります。 てっきり図鑑で見るような1つの宿主から複数の子実体が出ているのかと思ってたんですが・・・。


■ 2019年08月17日 撮影

何と宿主が2つ、それぞれ個別に出ていました。まぁコレはコレで。 宿主のコメツキムシの幼虫からは菌糸が材中に伸びています。 基部は暗紫色で一端褐色になり、成長点付近はまた紫色になると言う感じです。 小型の子実体や若い子実体ではもう少し紫色が視認しやすいです。 この色合い個人的に大好きで、すぐ擬人化しちゃいました。

小型で食用価値は無く、薬効成分も特に無いので完全な観賞用の種。 子実体が美しく、虫草屋さんには安定して人気がある種と思われます。 冷涼なブナ林帯を好むため、出会うためにはちょっと山を登らないと。

■ 2015年08月27日 撮影

どろんこさん主催のブナ林帯探索にガガンボさんと一緒するも凄まじい雨。 大雨洪水警報が発令される中見付かったのは今となっては良き思い出。 実は発見段階ではその色からアシグロクビオレタケだと思っていました。 しかし帰宅後に結実部の形状に違和感を覚え、胞子観察で判明しました。


■ 2015年08月27日 撮影

ガガンボさんが発見した美しい子実体。雨のせいで撮影が大変でした。 老成すると褐色になるので甲虫生のアシグロと間違ってしまったワケです。

■ 2015年08月27日 撮影

ガガンボさんが見付けたのを掘るワケにはいきません。自力発見しました。 思えばこの不格好な先端部はムラサキクビオレタケそのものですね。


■ 2015年08月27日 撮影

土砂降りの中で傘を持ってもらい、頑張って断面を作成してみました。 まぁそれでも防ぎきれないくらいのとてつもない降雨量だったんですが。 断面には本種の代表的な宿主であるコメツキムシの幼虫が居ました。 実は直前まで手前に生きた宿主が居たのですが、撮影中にそそくさと逃げられてしまいました。


■ 2015年08月27日 撮影

帰宅後にクリーニングした状態です。凄く分かりやすく冬虫夏草ですね。 こうやって見ると確かに柄の基部や先端部が紫色を帯びていますね。


■ 2015年08月27日 撮影

子実体を拡大してみました。まさに首折れ型って感じです。 柄が折れた部分に結実部が形成されてこのような感じになります。


■ 2015年08月27日 撮影

結実部を拡大してみました。子嚢殻は暗紫色でほとんど埋生です。 結実部の組織が明るい色合いなので子嚢殻が非常に目立ちますね。 そして撮影中に光を当てたのが刺激になったのか子嚢胞子が噴出! 結局綺麗に採取できず、乾燥後に胞子観察をする事に。


■ 2015年08月27日 撮影

アシグロではなくムラサキだと判明した理由はこの胞子。 この2種は宿主も甲虫で共通ですが、子嚢胞子に決定的な違いがあります。 それはムラサキは二次胞子に分裂し、アシグロは分裂しないと言う点。 この胞子は子嚢胞子が4つに分裂した二次胞子。 乾燥した標本から採取し、低性能の顕微鏡で観察したので内容はこんなものですが。

■ 2018年09月09日 撮影

久しぶりに出会えました。しかも先端が折れてはいますが状態もかなり良いです。 しかしここ大台ヶ原なんですよね・・・国立公園内なので採取禁止です。 顕微鏡観察したかったんですが涙を呑んでその場を後にしました。


■ 2018年09月09日 撮影

この埋生の子嚢殻!先端がほとんど突出せず濃色の点となって現れるのはまさにムラサキと言う感じ。 断面作成も断面作成くらいはしたかったですが、材を崩すのもNGなので断念。 まぁ見る機会は今後も有ると思うのでその時で。

■ 2019年08月17日 撮影

子実体が色的にコケに合うんですよね。色相環的には緑の反対側が紫ですし。


■ 2019年08月18日 撮影

帰宅後に黒バックリベンジしてみました。これ実はギロチンしたヤツです。 やっぱり首折れ型の雰囲気は好きですね。普通じゃない感じが堪りません。 本種の子嚢殻はパッと見埋生型に見えますが、結実部のワリと縁部では突出してるんですよね。 色の濃い部分が大きいので平面的に見えるんでしょうか。

■ 2019年08月17日 撮影

本種の特徴なんでしょうが先端部が尖らないんですよね。 いや、尖らないと言うか他の首折れ型のように整った形にならないんですよね。 この子実体なんて先端部が大きくなって、結実部と同じくらいの幅になっちゃってます。


■ 2019年08月17日 撮影

綺麗に掘れたので胞子観察用に採取して持ち帰り、クリーニングせずに追培養することに。 本種は比較的材の浅い場所に宿主が居るのでギロチンはほんらいあまりしないタイプです。 しかし結実部が発達する頃には宿主がスカスカになっており、簡単に崩れます。


■ 2019年08月18日 撮影

水を用いてクリーニングしてしまうと胞子が噴出してしまうのでそのままスライドグラス上に設置。 1日経って見てみると白く胞子が積もっていたので無事胞子観察できました。 これはまだ未熟な子嚢胞子。これでは特徴が出ていません。


■ 2019年08月18日 撮影

そしてこれが本種の完璧な子嚢胞子です。 長さは70μm前後のものが多く、3つの明瞭な隔壁が存在し、隔壁部分でくびれるのが特徴です。 油球様の内包物が存在し、細胞の中央部には核があるためか内包物が避けています。


■ 2019年08月18日 撮影

どんな環境で撮影したのか忘れてしまいましたが、メチャクチャ綺麗に撮影できました。 油浸対物レンズで撮影したのですが、細胞がクッキリ写っています。 これどんな絞りや光量で撮ったんだろ?両端の二次胞子がやや尖るのが特徴です。


■ 2019年08月18日 撮影

ムラサキクビオレタケの胞子の特徴としては二次胞子に分裂すると言う点です。 外見が良く似たアシグロクビオレタケとの差異として挙げられている特徴ですね。 ただ二次胞子に分裂するとは言え分裂しづらいので根気良く観察する必要はあります。 中央の隔壁が最も分裂しやすいようです。

■ 2019年08月17日 撮影

小さなカタツムリが居たおかげでヌラメキで気付けました。 まだ全く結実部が形成されていない幼菌です。 紫色と言うよりは赤紫色ですね。二股になってるし。

■ 2019年08月17日 撮影

二股どころか三股になっている子実体を発見。 しかもちゃんと3本中2本は結実し始めています。 結実部は最初こんな感じで白く毛羽立ったような外見です。 何でこんな良く分からない結実部の出来方するんでしょうかね。

■ 2019年08月17日 撮影

ちょっと面白かったのがこの子実体。自分が最初に発生に気付いた子実体です。 首折れ型どころかちゃんと台座が出来ています。じゃあ左の先端部は何のために・・・。 折れた先端部に結実部が出来てるような子実体もありますし、意外と適当なのかも知れません。

■ 2020年09月05日 撮影

またも国立公園での発見です。当然ですが採取禁止の場所なので撮るだけで我慢! しかし子嚢殻の数を見れば、本種を知る方ならこの子実体のサイズが想像できるかと思います。 遠目からでもハッキリ分かるほどのサイズ感でした。


■ 2020年09月05日 撮影

この子実体、大きさもさることながら先端部がカッコイイんですよね。 本種の折れた後の先端は他の首折れ型に比べて不規則な形状になることが多いです。 しかし今回は複数本が癒着して束のようになっていました。 流れるような形状がやたらと格好良かったです。

■ 2020年09月05日 撮影

2018年に見付けたのと同じ朽木です。そう、大台ヶ原なんですよね。 2019年は発生が見られなかったのですが、周期でもあるんでしょうか?


■ 2020年09月05日 撮影

何かやたらとアクロバティックな形状してるなと思ったら2回折れてたんですね。 1回目が横に折れて、2回目が下に折れているので、結実部が2つ形成されています。 この埋生で先端だけが突出した子嚢殻はかなり独特で好きですね。

■ 2020年10月18日 撮影

ウツロイモタケを探すも不発。その帰り際でオオイチョウタケの大群生に出会うも老菌ばかり。 ガッカリしていたらそこに1本だけ佇む広葉樹材に何か冬虫夏草っぽい姿が・・・?


■ 2020年10月18日 撮影

見事な首折れ型の子実体!発見した時は子実体の色からアシグロクビオレタケだと思っていました。 しかし観察結果を見た多方面の方から本種であると教えて頂きました。 それを前提に結果を精査した結果、やっぱムラサキだなと言う結論に至りました。


■ 2020年10月18日 撮影

一応黒バック撮影です。宿主がボロボロになりかけているので結構大変でした。 私の経験ではムラサキクビオレタケは冷涼な環境を好む種だと言う印象です。 ですがここは普通に低地の里山です。なので個人的には意外な出会いでした。


■ 2020年10月18日 撮影

結実部も黒バック撮影してみましたが、この子嚢殻の突出具合は確かにムラサキっぽいですね。 アシグロはどちらかと言うとサビイロ寄りの色ですし。 上でも触れていますが本種は環境によってかなり褐色になることが知られているので、目の当たりにした感じです。


■ 2020年10月18日 撮影

オマケで子嚢胞子も観察できましたが、4個の二次胞子から成る短い糸状でした。 以前見た胞子と寸分違わず同じ見た目なので、確定で良いでしょう。 ちなみに分裂しないと思ってましたが、別の写真の端に真ん中でぶった切られたのが写ってました。

■ 2022年08月25日 撮影

しんや氏にクビオレアリタケの発生地を案内して頂いた際に思いがけず再会。 驚いたのはこの場所がかなり低地であること。2020年に見付けた場所よりずっと低地だと思います。

■ 2022年08月25日 撮影

最初に出会った子実体はしんや氏が発見したもの。 「何かの冬虫夏草ですねー」と最初はあまり気に留めてませんでした。 しかししゃがみ込んで見てみると見覚えのある首折れ型の結実部と個性丸出しの子嚢殻! ただ冷涼な高山帯で見るものに比べると小型ですね。恐らく宿主のサイズが違うのでしょう。

■ 2023年09月24日 撮影

しんや氏とめたこるじぃ氏と私の3人でブナ帯へ冬虫夏草探しへ! 時期的にあまり収穫は無いと予想していましたが、実際には地下生菌も冬虫夏草も大収穫! やはり探索力の高い方が集まると見付かるものですね。 これはめた氏が発見した立ち枯れの目線の高さに発生していたもの。


■ 2023年09月24日 撮影

宿主が小型だったため子実体も小型ですが、成熟度合いは良い感じでした。 子実体が小型なので相対的に子嚢殻が大きくて綺麗! 低い場所に居ることが多いので、こう言う高い場所に出ているものは中々目に入りませんね。
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