★Ophiocordyceps sp. (ハマキムシイトハリタケ)
■ 2017年07月08日 撮影 初参加の第35回虫草祭にてその存在を初めて知った超マイナー冬虫夏草。 地中に居るハマキガなどのガの幼虫から発生する「葉巻虫糸針茸」です。 その後まさかの地元発見に成功。毎年安定して発生を続けてくれています。 極めて小型の地上生で、私の地元ではアセビの木の周囲に大量発生します。 種小名は未決定であり、発見難易度の高さから知名度が極端に低いです。 「糸」と名が付くように針タケ型の冬虫夏草の中でも特に小型の種です。 そのため発見するには林床を匍匐前進して目線を可能な限り下げる必要が。 本種が見付けられれば大抵の地上生の虫草は発見できるとさえ言われます。 例えるなら「広大な森の中で地面から生えた白い糸一本を探す」感じです。 本種に似た外見の冬虫夏草は多いですが、微妙に個性があって判別はできなくもないです。 ■ 2017年07月08日 撮影 本種は極めて細く、柄の途中が葉に付着した状態で発見される事が多いです。 そのため普通に持ち上げただけで途中で切れてしまう(ギロチン)のです。 今回は奇跡的に巣の中の宿主もそのままの状態で採取する事ができました。 ■ 2017年07月08日 撮影 帰宅後にクリーニングしてから黒バック撮影。こうして見ると分かりやすい。 子実体は細い糸状で長さは1〜1.5cm程度。色は白〜やや褐色ですね。 その途中に暗褐色の子嚢殻を裸生させます。黒いつぶつぶが子嚢殻です。 この粒1つがアミガサタケの凹み1つのようなもの。子嚢菌類ですから。 ■ 2017年07月08日 撮影 本種の重要な特徴として子嚢殻が部分的に集中する点が挙げられます。 良く似た種にヒゲナガガの幼虫を宿主とするハトジムシハリタケがあります。 ただコチラは子嚢殻が明るい褐色で柄にまばらに付く点で異なります。 この内部には糸状の子嚢胞子が詰まっており、先端の孔口から噴出します。 ■ 2017年07月08日 撮影 宿主は小型のガの幼虫。ハマキガの一種のようですが同定はできません。 それにしてもこんな小さい体のどこにあれだけの子実体を作る栄養が・・・? ■ 2017年07月08日 撮影 子嚢殻拡大です。成熟しても先端部にやや丸みが残るようです。 極めて小型であり、薬効も特に無いため当然ながら食不適となります。 そもそも発見自体が極めて困難であり、仮に効果があったとしてもキツい。 めったに見付けられない冬虫夏草なので、愛でるに留めるが吉でしょう。 ■ 2015年08月02日 撮影 初見は広島虫草祭。Hibagon氏のフィールドの目玉商品だったのが本種。 ただ時期的にはやや遅かったようで、ギロチン率が高かった印象アリ。 ■ 2015年08月02日 撮影 やはりある程度子嚢殻が固まって形成されると言う点は共通していました。 ただこの場所、地面にツタウルシがいっぱい生えている凶悪な環境。 今思えば普通のズボンと軍手で這い回っていたのは自殺行為でしたね。 ■ 2015年08月02日 撮影 ここのではモミの葉を繋ぎ合わせた繭の中のハマキガの幼虫が宿主です。 白い毛が生えている細長い物体が萎んだガの幼虫の見る影も無い姿です。 時期的には終わりがけなのか、宿主は縮んで原型がありませんでした。 ■ 2016年06月15日 撮影 翌年、地元でツブノセミタケを探してヒノキ林をウロウロしていた時。 発見したツブノを撮ろうとしゃがんだ時に見覚えのある姿・・・嘘! ■ 2016年06月15日 撮影 慌てて周囲を匍匐前進すると辺り一面ハマキムシイトハリタケだらけ! 発狂してツイートしようとするも圏外で大慌てしてたのは良い思い出です。 ここで良い標本を多数得ることができたので、じっくり観察できました。 ■ 2016年06月15日 撮影 持ち帰った子実体です。左は成熟、右は未熟or不稔。非常に小さいです。 初見時もそうでしたが基部で堆積物に癒着しているのが非常に厄介です。 おそらくそうすることで脆い子実体を安定させているのだと思われます。 ■ 2016年06月15日 撮影 左の標本の宿主を拡大してみました。ヒノキの葉を貼り合わせた繭です。 驚くべきに宿主が幼虫ではなく前蛹ですね。感染のタイミングのヒントか? ■ 2016年06月15日 撮影 結実部を拡大してみました。スーパーマクロ黒バックで頑張ってみましたよ。 子嚢殻のでき始めは赤褐色の腫れ物みたいなんですね。知りませんでした。 これが徐々に膨らんで見慣れた子嚢殻の形になります。裸生は良いですね。 ■ 2016年06月15日 撮影 奇跡的に成功した断面作成。鬼畜難易度でした。これはキツいですわ。 宿主は浅い場所に居るんですが、繭と周囲に癒着した部分が難関です。 ■ 2016年06月15日 撮影 帰宅後しばらくタッパー内で追培養し、自然と胞子が出るのを待ちました。 子嚢胞子は糸状で二次胞子には分裂せず、平均して130μmくらいかな? 本種とされているものにしては長めな気がしましたが、これが普通とのこと。 ■ 2017年06月03日 撮影 今年は定点観察しようと6月初めに訪問しましたが、流石にまだ早い? と思ったら普通に居ました。まだ若い部分は薄っすらと紫色なんですね。 ■ 2017年06月10日 撮影 この時はまだ発生条件が分かっていませんでしたが、とある事に気付きます。 不思議とアセビの周囲に発生が集中しているのです。偶然とは思えない。 そう思って離れた場所のアセビの樹下を探すと・・・ビンゴ!やはり居ました。 喜んで手前にあったスギの毬果をどけると、何と宿主が露出していました。 ■ 2017年06月26日 撮影 6月も末になり、そろそろかと思って行ってみると、その予想は大当たり。 7月頭にオフでここをご案内する予定なのでタイミングを見極めないと。 ■ 2017年07月08日 撮影 下見のお陰でどろんこさん木下さんとのオフのタイミングはバッチリでした。 ご案内した虫草師匠のどろんこさんにも満足して頂けたみたいで一安心。 この写真もヤラセではなくて、マジで高密度で発生しているんですからね! ■ 2017年07月08日 撮影 面白い子実体も発見。カニの爪みたい。右上の子嚢殻1つが何か惜しい。 ■ 2017年07月08日 撮影 地元オフで見付け、私が個人的に「キングギドラ」と呼んでいたヤツです。 宿主が隙間に潜り込んでしまったようでヒノキの毬果から出ていました。 しかも何とストローマが3本も出ています。こんなの見たことありません。 ■ 2017年07月08日 撮影 ストローマ一本一本は確かに普通より一回り小さいですが、それでも立派。 分岐はすれど基部から3分岐は珍しいです。宿主が大きいのでしょうか? ■ 2017年07月08日 撮影 帰宅後にクリーニングし黒バック撮影。うーん宿主の大きさも普通ですね。 むしろ小さいくらい。どう考えても質量保存の法則を無視していますね。 やはり蛹になるため地面に降りたどこかの段階で感染するのでしょうね。 しっかり毬果の隙間に繭を作っていましたし、地面で待ち伏せしてる? ■ 2017年08月11日 撮影 本種のシーズンもそろそろオワリ。胞子を噴出した子実体が目立つ時期です。 こうなると1〜2週間で忽然と姿を消し、次に会えるのは翌年となります。 ■ 2018年06月30日 撮影 今年も会いに行きました。昨年と違って下見ができていなかったので心配でしたが、無問題でしたね。 同じ場所を訪れるとあるわあるわ白いストローマ。結実しているのが肉眼でも分かりました。 かなり安定した発生坪のようですね。 ■ 2018年06月30日 撮影 成熟度合いもちょうど良い感じ。 子嚢殻先端が尖ってきており、あと数日で胞子を自然と噴きそうです。 やはり他の小型針タケ型の冬虫夏草と比べると子嚢殻が暗色で密集して形成されていますね。 この子実体はこれでも珍しくバラバラなほう。 ■ 2018年06月30日 撮影 今年も居ましたキングギドラ!不思議と今回もヒノキの球果周辺で発見です。 何かこうなる要素でもあるのでしょうか。同一宿主から複数本発生すると言うのは魅力的! ■ 2018年06月30日 撮影 以前は顕微鏡の性能が悪く本来見るべき姿を全く捉えられませんでした(2016年06月15日撮影分参照)。 見返しても酷い写真です・・・が、今年はgajin氏に頂いた顕微鏡がある! 各種観察のため2個体を持ち帰り、追培養・・・と言うか胞子噴出を待つことに。 ■ 2018年07月02日 撮影 2日後、下に置いたスライドグラスを見ると明らかに白くなっています。 大成功!って言うかまぁここまで成熟していたら間違いなく成功ですけどね。 ■ 2018年07月02日 撮影 子嚢は撮影に失敗したので2日に分けて撮影されています。 まずはメルツァー試薬で染色したもの。長さは約150μmで子嚢胞子より少し長いくらいかな? ■ 2018年07月03日 撮影 先端の肥厚部がキレイに撮れなかったので染色せずに撮影し直し。 ■ 2018年07月03日 撮影 ついに・・・ついに撮影できました!これがハマキムシイトハリタケの子嚢胞子です。 長さは約130μmの短い糸状で、長さは安定しているようです。 外見の似たハトジムシハリタケの子嚢胞子は150μmくらいが普通みたいなので、平均してもやはりやや短いようです。 そしてもう一つの特徴、すでにこの写真でも分かりますが、少し暗くしてみると・・・? ■ 2018年07月03日 撮影 そう、何と隔壁があるのです。数は不定ですが数えた感じだと11〜14個の隔壁を持っているようです。 ただ隔壁間の細胞の長さも倍の差があるため、恐らく分裂するしないが適当なのだと思われます。 またこの隔壁の見た目からしても二次胞子には分裂しない、あるいは分裂しにくいのは確実ですね。 これで余すところなく本種を観察できたかな? 個人的には近縁であろうハトジムシハリタケやスカシヒメハリタケとは外見的にもミクロ的にも別種であると感じました。 ■ 2019年06月02日 撮影 雨が多い年だったので大丈夫かなとは思っていましたが、今年も中々の大発生のご様子。 地面に伏せて地表をカスるようにライトを当てると、未熟なストローマがいっぱい! ■ 2019年07月07日 撮影 やっぱりこの凝縮された感じ、最低限の構造って感じ、洗練された感じが大好きです。 これだけ小さくてもちゃんと針タケ型やってるのが凄いですね。 子嚢殻は基本的に集中して形成されますが、不思議とはぐれ子嚢殻が良く出来ます。 ■ 2019年07月07日 撮影 採取するつもりもなかったのでとりあえず宿主だけ確認してみました。 実はこの日この場所で初のホソエノコベニムシタケが見付かりましたが、宿主は同種のようです。 ただし宿主に対する子実体のサイズからすれば本種の本種のほうがずっと大きいですね。 ■ 2019年07月07日 撮影 この日のベストショットはコチラ。サイズ比較はやはりヒノキの球果が一番分かりやすいですね。 とりあえず2016年から毎年訪れていますが、多少の少雨でも発生は安定しています。 あまり個体数にも変動は無いようで、安定度的には申し分ない坪だと思われます。 ■ 2019年07月07日 撮影 やはり本種の子嚢殻は非常に小型かつ集中して形成されるので、肉眼だと付着した土にしか見えませんね。 マクロレンズで観察すれば裸生の子嚢殻だと分かるんですけど。 ■ 2020年06月19日 撮影 コロナ禍が一段落したので久し振りの、超久し振りのオフ会を青fungi氏と行いました。 流石に6月中旬では未成熟だろうとおもって訪れたらまさかの成熟個体が。 今までは7月以降じゃないとマトモなのは見れなかったんですが、これは暑かったからかな? ■ 2020年07月12日 撮影 コロナ禍がまたぶり返しそうな頃、今度は時期的にちょうど良いかとガガンボ氏とキノコオフ! 氏は初見の虫草祭で本種にトラウマがあったそうで、それを克服するためにチャレンジ。 すぐに発見に至り、採取も成功!喜んで頂けたようで良かった・・・。 この日は先月青fungi氏と訪れた時よりも圧倒的に成熟個体が多かったです。 ■ 2020年07月12日 撮影 綺麗に子嚢殻が形成された子実体です。 やはり本種の子嚢殻は集中する傾向がありますね。 これでもまだ子嚢胞子噴出の痕跡がある子実体は見かけなかったかな? ■ 2020年07月12日 撮影 久し振りに宿主を探り当ててみました。やっぱり同じ小型のガの幼虫のようです。 比較的強靭な肉質ですが発生初期に周囲の物体に菌糸で固定するため、その部分から引き剥がす際にギロチンしやすいです。 またこの子実体は本種にしては目地らしく子嚢殻がまばらに出来ていますね。 ■ 2021年06月20日 撮影 本当にこのフィールドの安定感は尋常ではありません。 ここまで「行けば会える」感の漂う場所はあまり無いんじゃないでしょうか。 今年は少し成熟が遅いのかな?子嚢殻が出来かけのものが多かったです。 ■ 2022年07月09日 撮影 今年も来ました。以前のような異常発生はあれから無い気がしますが、発生は安定しています。 ちゃんと時期を狙って行ったので良い感じに成熟した子実体が多かったです。 しかしヒノキの葉と比較してこの細さ・・・そりゃ見付けにくいワケだ。 ■ 2022年07月17日 撮影 この日は元々冬虫夏草探しの予定でしたが、どなたかとご一緒しようと思いお声がけ。 するとすず姉氏が行けます!とのことなのでフィールドをご一緒することに。 セミタケフィールドの後にこの場所を訪れましたが、やっぱり極小サイズに驚かれていました。 やっぱこの場所を案内する醍醐味はコレ、本種の発見難易度の高さを体験してもらいたいのですよ。 ■ 2022年07月17日 撮影 あーやっぱり裸生子嚢殻は良い・・・癒される・・・私の心の清涼剤です。 ■ 2022年07月17日 撮影 久し振りに断面作成。珍しくこの子実体は子嚢殻が分散していて新鮮です。 宿主がかなり縮んでいますが、左下に見える赤い球体が宿主の鱗翅目の幼虫の頭です。 これだけ伸びると流石に宿主内の栄養素はスッカラカン。そりゃ萎んでシワシワになるワケです。 それでもこの虫体からこれだけ大きい子実体が出来るのは凄いなぁと。 ■ 2022年07月17日 撮影 この日この場所を訪れた理由は新たな発生範囲の発見でした。 本種は大量発生はするもののその範囲が狭いです。 なので他にも出ている場所が無いか、普段行かない場所を2人で歩きました。 その結果、やはり他の場所でもアセビの樹下で見られることが判明。 かなり離れた場所でも発生が見られたので一安心です。 ■ 2023年07月08日 撮影 いつもしんや氏のフィールドにお邪魔してばかりなので、今回は私が案内役! 結果は大成功で、メインターゲットの本種を含めて10種類もの冬虫夏草が見付かりました。 この場所は以前ウメムラセミタケをご案内した場所。本当に優秀なフィールドですねぇ。 ■ 2023年07月08日 撮影 時期を見計らっての訪問だったのでタイミングはバッチリでしたね。 やっぱこの子嚢殻の出来方が最高なんですよね。 ■ 2023年07月08日 撮影 断面作成してみました。発生箇所でギロチンしやすいので慎重に作成しましたよ。 この目に入れてもちょっと痛い程度の極小のガの幼虫からこのサイズの子実体が出る不思議。 なお発生量は凄まじかったので、しんや氏は4個体ほど採取しましたが・・・。 ■ 2023年07月08日 撮影 数えてみると子嚢殻が6個しか形成されていない子実体を発見。 どうも宿主が小さくて子嚢殻を沢山作るだけの栄養が無かったんでしょうね。 周囲のコケの胞子体のサイズと比べると、その小ささが良く分かると思います。 ■ 2023年07月08日 撮影 発生状況を深度合成してみました。鮮やかな色のコケとのコントラストが素晴らしいです。 本当に小さい冬虫夏草なので、屋外での撮影はワリと拡大限界があるんですよね本種。 それでも綺麗に撮影できると嬉しいものです。 ■ 2023年07月08日 撮影 面白い子実体を発見!何とストローマが一回転しているではありませんか! 基本的に真上に伸びるので一時的に向きが変わったりするとこうなることはありそうですけど、 冬虫夏草では考えにくいですし、どう言う理由でこんな形状になったんでしょう? ■ 2024年06月22日 撮影 めたこるじぃ氏としんや氏を地元にお招きしての冬虫夏草オフ。 午前中はしんや氏のフィールドでワリとお腹いっぱいでしたが、いざ見ると見慣れててもテンション上がりますね。 発生量は相変わらずで、ホント誇張無しに100個体は余裕で見れてると思います。 ■ 2024年06月22日 撮影 ちょっと心配するくらいには時期が少し早めかったので成熟度の心配はしていました。 流石に未熟な子実体は多めで、結実していても子嚢殻があるものはまだ少なかったです。 その中から断面作成できそうなものを探し出しました。 ■ 2024年06月22日 撮影 本種は宿主が浅い位置には居るものの、小さすぎることと基部が周囲に癒着しているため、 ワリと断面作成が難しい種です。行ける!と思って思い切り繭を破ると綺麗にギロチンします。 繭は現地では完全に除去しない、癒着している土や葉は除去しない、これに限る。 ■ 2024年07月13日 撮影 しんや氏を地元にお招きしての冬虫夏草オフ。ええ、またです。 先月行った葉巻虫の林を訪れると、最盛期と言う感じでした。 目的はコメツキムシタケと思しき幼菌の経過観察でしたが、 状態の良い本種も沢山いたのでせっかくなので何枚かパシャリ。 ■ 2024年07月13日 撮影 珍しくまばらに子嚢殻が出来た子実体です。本種の子実体は2〜3ヶ所にまとまる傾向があるため、 こんな感じでまんべんなく子嚢殻が形成されていると結構雰囲気が違うものですね。 ■ 2024年07月13日 撮影 うんうん、やっぱハマキムシと言えばこの子嚢殻の付き方ですね。 今年は今まで探していた場所から捜索範囲を広げ、更に高密度な発生地を発見できました。 毎年安定して本種に出会えることが確約されているのは恵まれていると言うべきでしょう。 ここでは足の踏み場も無いほど出ているとは言え、全国的にはかなりレアな種ですので。 |