★Tolypocladium sp. (クビナガクチキムシタケ)
■ 2017年07月01日 撮影 あのフジタケ氏のフィールドにどろんこさんと一緒に同行させて頂きました。 その際に亜高山帯のブナ林帯で見付かった激レア冬虫夏草「首長朽木虫茸」。 第一発見者のどろんこさんも最初は虫草かどうか疑ってしまってました。 非常に硬いイタヤカエデ等の腐朽材中のヤマトクチキカの幼虫が宿主です。 結実部が1〜2mm程度しかないため、発見難易度が極めて高い種ですね。 以前はElaphocordyceps属とされていましたが、その属は無くなった模様。 外見が極めて似た種に甲虫の幼虫生のフトクビクチキムシタケが存在します。 ■ 2017年07月01日 撮影 拡大するとこんな感じです。腐朽材表面に湧き出した菌糸から子嚢殻が・・・。 滴る水滴が白く濁っているのは子嚢胞子が噴出し溶け込んでいるためかと。 ちなみにこの結実部、直径が2mm程度しかなく、白い点にしか見えません。 ■ 2017年07月01日 撮影 発生状況はこんな感じ。倒木の下面に見える白い斑点は全部本種の子実体。 元々かなり珍しい種の上に、ここでは初発見だったようで大盛り上がりでした。 この子実体は採取しなかったので子実体の詳細は下で詳しく説明します。 同属のフトクビクチキムシタケは薬用になるようですが、本種は不明です。 食用とするにはあまりにも小型。あくまでもマニアのステータス的存在。 ■ 2017年07月01日 撮影 探し回っていると非常に大きい子実体を発見しました。っても3mmですけど。 本種は元々白色の子実体ですが、熟すとこのようにやや黄色みを帯びます。 ■ 2017年07月02日 撮影 帰宅後にクリーニングした物を黒背景で撮影。何か良い感じじゃないですか? ノコギリと彫刻刀を使用して何とかかんとか標本を採取する事ができました。 材がバイオリンの材料にもなるカエデ類なので硬いなんてもんじゃないです。 ■ 2017年07月02日 撮影 子実体は白色で個体差か老成かは知りませんがやや黄色を帯びる事も。 白色菌糸が材の表面に広がり、そこから半裸生型の子嚢殻が形成されます。 問題はここから更に断面を作成せねばならないと言う事。長い戦いの始まり。 ■ 2017年07月02日 撮影 所要時間4時間以上。二度と掘りたくない。ウソですチャレンジしたい。 カッター、ピンセット、彫刻刀を総動員しての長期戦を何とか制しましたよ。 ■ 2017年07月02日 撮影 宿主は材の中のヤマトクチキカの幼虫。まぁ要するにボウフラって事です。 本種は冬虫夏草としては少数派なハエ目の幼虫を宿主とする種なんです。 で、ここで気になるのが「首長」と言う名前。理由はここで初めて分かります。 ヤマトクチキカは湿潤な朽ち木に穿孔、し肛門近くから水管を伸ばしています。 これは水中のボウフラがお尻の呼吸管を水面に向けているのと同じですね。 しかし本種に感染すると宿主を満たした菌糸は水管内部を通って材表面へ。 そこで子実体を形成するので首が長くなっているように見えると言うワケ。 手前に見える管が水管。子実体と宿主の間はこれ一本で繋がっているだけ。 ■ 2017年07月01日 撮影 最初は全く見付けられませんでしたが、慣れてくると目に付くようになります。 この時の慣れがその後のフトクビクチキムシタケ発見に繋がるんですけどね。 ■ 2017年07月01日 撮影 胞子観察用に採取した標本。深く切り出したつもりが宿主は更に奥でギロチン。 しかし子実体は良い感じに成熟していたので胞子を見るには最適でした。 ■ 2017年07月02日 撮影 帰宅後にマクロ撮影。結実部が1mm程度しかなく、撮影は困難を極めました。 フトクビクチキムシタケと区別するには材と子実体の境界部分を見ると一発。 本種は生育メカニズム上、子実体が材表面に貼り付くように広がります。 フトクビはその名の通り直根状なのでこのように子実体の縁が広がりません。 ■ 2017年07月02日 撮影 撮影中に胞子が飛び始めたので急いでスライドグラスに受けて観察しました。 子嚢胞子はルーペ観察の段階でハッキリと長い糸状だと分かるほど長いです。 子嚢殻が少ない冬虫夏草は一度胞子を取り損ねる可能性が高くて怖い! ■ 2017年07月02日 撮影 子嚢胞子を更に拡大。多数の隔壁部で分裂して円筒形の二次胞子になります。 地下生菌生種と同じTolypocladium属菌であり、胞子も何となく似ています。 ■ 2017年07月02日 撮影 横に空いた穴は甲虫の幼虫か何かが開けた穴でしょうか?中が覗けそう。 左上に見える小さい白い穴がヤマトクチキカの巣穴かな?・・・感染してる? 最初は材の下面に多いと思っていましたが、普通にあらゆる面に出る模様。 |