■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

Torbernite / 燐銅ウラン石・トーバーナイト
□ Cu(UO2)2(PO4)2・8-12H2O

一目惚れで購入したのはいいものの保管方法を考えておらず、面倒事になったキャビネットサイズの標本です。 現在はクッション材を貼ったブリキ缶に入れ、その周囲を鉛シートを貼った板で遮蔽し、生活範囲から離して保管しています。 燐灰ウラン石のCaがCuに置換された正方晶系の燐酸塩鉱物で、代表的な放射性鉱物の一つです。 燐灰ウラン石に比べるとやや知名度は劣りますが、美しい結晶を持つ魅力的な鉱物です。 世界的に見ても産出地が少なく、多くは北半球の高緯度地域ですが、この標本No.001は南米コンゴ共和国産です。

本鉱物は燐灰ウラン石と比べてウランの含有量が多いため放射線量が強く、取扱いには注意が必要です。 標本に触れる際は手袋を着用するだけでも防護効果はあります。 長時間至近距離に置かない限り放射線自体は人体にさほど影響はありません。 発がん性を持つラドン(222Rn)を常に放出しているので本来は気密容器に保管すべきなのかも知れません。

放射線量は至近距離(1cm)で約75μSv/h。 大きさのわりに弱いですが、これは本鉱物の結晶自体は少ないためと思われます。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

母岩全体に多く銅を含んでいるため孔雀石を伴って本鉱物の暗緑色の板状結晶が見られます。 結晶は様々な方向を向いており、角度を変えるときらめいて見え美しいです。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

本鉱物は板状結晶になるのが特徴で、正方晶系なだけあって綺麗な四角形になることが多いようです。 またこの結晶が何層にも積み重なって雲母のように見えるため、本鉱物や同様の産状を有する燐灰ウラン石、そのメタミクト化鉱物を「ウラン雲母」と総称で呼びます。 ウラン雲母の状態の本鉱物は透明感がほとんどありませんが、この産地の結晶は個々が分離しており非常に高い透明度を持っています。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

標本自体が大型のため、一つの標本内で様々な産状が見られるのがお得感があって嬉しいですね。 側面には孔雀石上に微細な正方形の板状結晶が折り重なるように生成された部分も。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

驚いたのはこの結晶。大きな板状結晶上にバラの花のように広がった微細な板状結晶が生成されたユニークな産状です。 大きな結晶が生成されたのち、あるいはその途中に微細な結晶が生成される温度環境に変化したためこのような状態になったのでしょう。 ちなみに緑のバラの花言葉は「穏やか」だそうですが、性質的には全く穏やかではありませんね。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

板状結晶が母岩に突き刺さったような状態で産出するため、正面かつ全体をとらえられることのできる結晶がほとんどありません。 辛うじて見やすい結晶がありましたのでマクロレンズを用いて拡大してみました。 こうして見ると結晶が単なる平たい六面体ではなく、狭い幅ですが結晶成長時に生じる階段状の段差がある面が確認できます。 形状的にはモリブデン鉛鉱の板状結晶と同じですね。


■specimen_No.001_L Kolwezi District, Democratic Republic of the Congo

本鉱物は不純物を多く含んでいることが多く、市場に出回る標本も不透明な結晶が多いです。 ですが標本No.001のようなコンゴ産の結晶の透明度は極めて高く、結晶面に凹凸がない場合は背後の母岩が透けて見えるほどです。 美しい鉱物なので頻繁に眺めたいのはやまやまなのですが、放射性鉱物の性。悩みどころですね。




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